身体だけになる時間 – 自分の心を切り替える方法

Dance like no one is watching
photo by Heather, CC BY-NC 2.0

数日前に書いた記事
「ミュージシャンにお金を払う いちばんの方法」」

が、いわゆる“buzz”を小さいながらも起こしまして、これまで以上にたくさんの方がこのブログを読んで下さいました。ありがとうございます。

自分は現在ウェブ制作やそれを含むコンサルなどをしているのですが、今回の拡散の過程やアクセス状況など、自分の技術的な観点からもいろいろなことが読み取れるもので、とても興味深いものでした。その分データの変動が気になってしまい、いろいろとやることがあるなかで状況のなかでもさらに画面に張り付く時間が長くなり、昨日はずっと頭痛が続くという状態になってしまいました(笑)。

そんなとき、自分にはほぼ確実に状態を改善する方法があります。

それは踊ること。

またこいつはただの変人じゃないか、と思われるでしょうが、別にダンスでなくともヨガ、筋力トレーニング、走る、何でもいいのですが、身体を動かすことがてっとりばやい。それも大事なのは、頭を空っぽにしてしまうことが、自分の心を切り替える方法としてとても有効なんです。

李小龍大人も教えています。
“Don’t think, feel”と。

僕はこの「考えるな、感じろ」という言葉をある素晴らしいダンサーから教えられました。数年間は、単にそのまま「音楽を感じて踊れ」という意味でしか理解していなかったのですが、だんだんと自分なりにわかってきたことがあります。

本当に頭で考えて踊っていては、本当の喜びにはたどり着けないのだ、ということです。

「考えるな」とはどういうことか?

日本の武道には昔から「自然体」という言葉がありますが、ネットで意味をあたっても具体的な体の姿勢の話しか出てこないので、自分なりの理解を書きます。

剣道の立合いで、相手が踏み込み、面を狙ってくるな、と見て取り、それに対してでは左に避けよう、返す刀で胴を狙おう、などということを「考えて」いたら、実際、その考え通りに勝てるでしょうか? 無理でしょう。だからこそ、究極的には身体の鍛錬を経て、「自然に相手の動きに反応してしまう身体と心理の状態」を「自然体」と呼ぶのだと思っています。

ダンスでこれにとても近い、わかりやすい例がウェーブという動きです。体の腕や胴体などで一定の基準線を固定し、その基準線の上を波が動くように関節を一部ずつ動いているように見せることです。

例として、いつもご自宅ビデオ?を公開し続けている大御所ダンサー、Popin Pete氏1のウェーブを見てみてください。

まずは手の練習をすることが多いこのウェーブ、関節1つ1つを、「まず指先、次に手のひら、手首からひじを、こうやって動かしていこう」と考えていたらこんなダンスはできません。練習を重ねることで、ただ「ウェーブを通そう」と思えば身体が一連の動きをやってくれるようになります。その次の段階としてさらに踊り続けていくと、「流れるようなメロディがあるからウェーブを流そう」ということを考えなくても、そういう音が流れば自然にそういう動きが出てくるようになっていく。さらに実はこれ、初めて聴く音楽であってもそういう反応が可能になっていくのです。

そういう状態こそが本当の「自然体」だと、自分は理解しています。

意外と簡単? 「自然体」になるには。

ちなみにこの「自然体」の状態に入るのは、それほど難しいことではありません。

ここ数年、走ることにハマっているひとが多いですが、これはウェーブなど以前に、健康な人であればたいてい何も考えずにできることです。普通に走るときに「右足上げたから次は左足を後ろに蹴り出そう」なんて考える人はいないでしょう。しかも、走り続けているといつの間にか、走っていることそのものから意識が離れていく。この状態で別のことを考え出す人も多いと思いますが、一方でただ「なんとなく走っている」人もいるのではないでしょうか?

それは既に、「道があっちに曲がっているから右に曲がらなきゃ」とかそういうことを考える必要がない状態になっているということ。状況を自然に受け入れて反応する、ある種の自然体だと思います。

意識を飛ばす、心を無にする、無心に遊ぶ、いろいろな言い方がありますが、こういった状態を持つこと。これが実は人の心を素晴らしく良い方向に向けてくれます。気分転換という言葉にするとずいぶん軽く響くかもしれませんが、その効果は本当にバカにできないものです。

ここ数年、瞑想、アシュタンガ・ヨガ2や座禅などが注目を集めているのも、個人間の競争が激しくなり必要以上のストレスを意識せざるを得ない社会の反映だと思うのですが、運動ではなく呼吸と感覚を使って、自分の心を自分から切り離して見つめるといったこれらの方法論で得られる心理的効果は、ここまで書いてきた「自然体」と実は同じものなのではないでしょうか? それが言いすぎだとしても、どこか共通した部分のある「 自分の心を切り替える方法 」だと実感しています。

心が疲れているなら、身体も疲れさせてから休む

世の中、イライラすること、おかしいなとおもうこと、怒ってしまうこと、いっぱいありますよね。でも、そのままその感情を自分の心に貯めすぎると、本当にこわれてしまいます。それを防ぐためにも、自分なりに続けられる、楽しめる「自然体」。それを見つけることをおすすめします。身体を「使う」、運動するというよりも、「 身体だけになる時間 」をつくること。それだけで、疲れていたはずの自分がかえって元気になる。そういう経験があるひとも多いはず。

なにもきついトレーニングや、流行のヨガなんかでなくてもいいんです。
もしかすると、人によってはテレビゲームだったりするのかもしれませんよ?

  1. Poppin’やBoogalooというダンスを世界中に広めたダンスグループ、The Electric Boogaloosのメンバーで、Soul Trainの時代から現在まで活躍を続けている。
  2. Googleなど著名IT企業が社内で瞑想を取り入れているのは有名な話ですね。