無意識に刷り込まれた女性差別

「自分の回りにいる“いい女”で、結婚したくてもできない人が多いのはなぜ?」
「女性ばかりが、“結婚しなければ”というあせりを持ちがちなのはなぜ?」

疑問を見つけては考えてこんでしまう性格に加えて、女性と話している方が好きなもので、若い頃、こういうことをよく不思議に思っていました。

今ならこの疑問に答えられます。「日本には根強い女性差別があるから」です。

飛躍があるように思われるかもしれないので、まず女性側と男性側で、それぞれ結婚の動機を確認してみましょう。結婚のきっかけ、理由については男女ともに「好きになった相手と一緒になりたいと思ったから」が約5割1を占めていますが、面白いのは「結婚のイメージ」の男女差。

  • 男性ベスト5 「我慢」「幸せ」「家族」「生活」「墓(!!)」
  • 女性ベスト5 「家族」「忍耐」「我慢」「生活」「幸せ」

……と、まあ納得の結果(?)なんですが、特に未婚女性の場合、「生活」が2位に上がり、さらに「安心」が5位に入ってきます2。女性が結婚に抱くイメージに「生活」や「安心」が入ってくるということは、1人で生活し続けることに男性よりも不安を感じているということでしょう。男性は浅慮で無計画だからという差別的な意見は放っておくとして、その理由はなにか。

これはやはり、経済的な男女格差が影響していると思われます。男女の賃金格差はなんといまだに平均で10:7もあります。この状況では、長期的な人生設計を考えた時、女性が結婚を「経済的な手段」として視野に入れるのも当然の帰結です。

男性の立場からしても、女性から「値踏み」される経験がある人は多いはず。男性は女性と出会った際、瞬時に、ほぼ本能的に性的魅力を判断してしまうのですが、一方の女性は、かなり冷静に男性の「価値」を判断しています。その際の判断基準には、たいてい「経済力」が含まれます。そうでない場合、よく「男を見る目がない」などと言われる状況に陥るわけですね(笑)。

この「値踏み」というやつは若い男にとってはかなりプレッシャーになるものでしたが、そういう視線を感じる女性というのは、例えばクラブで言えばたいてい、踊りもせずにバーカウンター前で男にたかろうとしているタイプに多く見られます。一方、本当に音楽を楽しんで踊り狂っているような女性と言うのは比較的そういった観点が薄いことに気づいていき、自然とこちらの女性を見る目も鍛えられたものでした。

自分はお金を稼ぐことへの執着があまりないせいもあり、こういう「値踏み」してくる女性を避けてきたんですね。何故かといえば、自分はやはりお互いを人として大事に想い合える、そういう女性を求めてきたから。だから結婚に上記のようなイメージばかりが入ってきて、「愛情」とか、妻、または夫を大事にする言葉がひとつもはいってこないという状態には驚かされます(もちろん調査の形式によっては最初からそういう項目がなかった可能性はありますが、「墓」があるくらいだから自由記述であろうと判断)。

つまるところ、経済力、権力、名声、そういったものを含めて相手を選ぶという価値観が広く、しかも当然のこととして根付いているのです。「何を当たり前のことを、女というのはそういう生き物だ」という人はちょっと待って下さい。それが仮に「当たり前」だとして、なぜ、そういう価値観が根付いているのか、いま、自分たちが望む理想の結婚とはどういうものか、考えてみてください。そういう女性がもし、しっかり働けば自由に暮らせる、逆に男を養えるような状況にいたら、男を経済力で選んだりするでしょうか……?

よく売れる女性誌の見出しにも現れていますよね、「モテ」ることを第一にする価値観。「モテ」というのは、より多数に魅力的であると受け取ってもらうための「技術」であり、実際は恋愛とはまったく縁遠い打算の集合です。結局、女性は自分の性的魅力を若いうちに発揮し、経済力のある男性を「狩る」。特に子供がほしいという気持ちも働くと、必然的に配偶者との関係だけでなく、「経済力」と「家族」という概念が重視されることになる。

そうしなければ、自分の力で生きていくことが難しい。
自分の力で稼ごうと思っても最初から女性であるというだけで条件が悪くなることが当然の社会。

女性だからというだけで、結婚して子供を作って当然だから会社を数年でやめるという前提に立って賃金体系を設定し、そういう人事考課を行うことが当然になっていれば、賢い女性たちのことですからその中でどう生き抜くか冷徹に判断してきますし、それは自分の娘への教育にも影響し、そういう考え方を再生産する。

いま冒頭の疑問に答えるなら、「自分が考える“いい女”は、男性を経済力で判断したりしない分、結婚へのハードルが高かったから」であり、「女性が経済的に弱い立場に置かれているから」です。 それぞれ、女性は男性より能力が劣るという差別と不当な扱いが原因にあります。

結婚に何を求めるのか。
差別があるという現実を踏まえ、経済的手段として職業家政婦的な良妻賢母を演じる人生を選ぶのか。それとも、周りからは奇異の目で見られながらも理想の関係を求めつつ自分の食い扶持くらいは自分で稼いで当たり前といい気概をみせるのか。それぞれは極端な例ですから、その中間にある幸せがたくさんあることもわかっています。それでも、僕らの社会に根深くしみついた男尊女卑は、本当に無意識のレベルにまで染み付いている。その一例として、結婚願望の裏側にある、賃金格差の問題はまず変革するべきことのひとつだと考えています。

追記: ごく最近の話で、カトリックの教皇フランシスも男女間の賃金格差を「スキャンダル」と非難していますね。世界は確実に変わっていっていますが、自分たちはどうなんでしょうか。

  1. >> 2013年 第7回結婚・出産に関する調査
  2. ちなみに未婚男性では「墓」が急増。ヒドい話です(笑)。