Appleの発表1、今年は「普通」な感じでしたね。それでも、主に彼らのお陰で映像を扱うソフトをはじめいろいろなデジタル技術の敷居が極端に低くなり、いわゆるVJとは違う、ダンスライブと映像のコラボレーションはアイディア次第でいくらでも楽しめるようになってきました。
デジタル・テクノロジーとは無縁に思えるダンスの世界も、実は大きな可能性を秘めています。単にYouTubeでいろんなダンスが見れるようになった、という話ではありません。ということで今回は、「 IT時代のダンス 」について書いてみます。
実は私、すでに3年以上も前になりますが↓のようなパフォーマンスをしました。
簡単にいえば、曲に合わせたモノクロ映像を作って、それに左右されながら踊る、というものです。
これはまったくの余談だけれども、この日のスケジュールは最低で、何をやるか前日まで決めておらず、しかも当日の朝韓国から帰ってきて羽田→仕事に直行→夜パフォーマンスという恐ろしいものでした。
でも、これ以前に背景の映像を組み合わせてかっちり何をやるか決めて振りを演じる人たちの存在は知っていたのでふっと「final cutでモノクロ映像作っちゃえば、ステージのサイズも照明も自分でコントロールできるし、歌詞もアピールできるじゃん」とふと思いついたわけです。確か早朝3時か4時。そんで、むかーしから大好きなthe Peddlers “on the clear day”に曲を決めて、展開に合わせてこんな踊りができるかなー、と想像しながら映像を作りました。1時間かからなかったはず。で、あとは映像を見ながら曲を聴きながらイメージ。こんなことができるかな、あんなことができるかな。事前の振付けはなしで、すべて即興です。ま、体力不足で展開部分でアクロバットしたいなーとかおもっていたのはまるっきり出来なかったけど。
これはこれで好評でしたが、企画趣旨に納得行かない部分がありました。
それは、映像が即興ではないことです。
もちろん曲もレコーディング済みの音源を使っているんだから当然の話ですが、映像も即興化できるんじゃないか、という見込みを持っていたんです。例えばセネガルのサバール・ダンスは、ダンサーが指揮者となり、ダンスの動きを変えることで演奏者のリズムが変わります。これと同じことを、ダンサーと映像でできるんじゃないかと考えていたわけです。
僕がすぐ実現できそうだな、と考えたのは、
踊り手が踊る
↓
デジタルカメラで信号化する
↓
映像出力をイコライザで強制的に音楽的な波形に調整する
↓
音に自動で反応するVJソフトに入力
↓
音ではなく踊り手の動きに合わせて変化するかなりランダムな背景画像を出力
という流れでした。
実は同年6月にイベントを企画し、そこで披露するつもりだったのですがもろに準備不足で実現できず。
実は既にこういうアイディアを形にしているプロフェッショナルがいたんです2。
nosaj thing、今ではかなり人気を博しているLAのビートメイカーと、日本の映像クリエイターで最近もうひっぱりだこの真鍋大度、ダンサーはPerfumeなどでも活躍するMIKIKOと、まーそりゃ実現力高いわーという組み合わせ。踊り手の動きに従って、映像が変化する。その映像も、動きの軌道や強さによって変化するように仕込まれています。ただし、おそらく後半への盛り上がりや全体の振付けは何らかの筋立てが準備されていたのではないかとも思います。
このへんの技術は、昨今のPerfumeのライブでより洗練された「魔法のような」表現につながっていますよね。
自分はまずこの映像を見た時に、「ああやられたな」と思いつつも、とても嬉しかったのを覚えています。
また新しい形のダンスが見られる。筋立てや周囲の条件にではなく、自身の身体を使った表現力を拡張する、そういう手段が増えた。そのことがとにかく嬉しかったのです。こういった流れで、即興ダンスと映像の新しい連携、それもダンサー自身が自分の発想の延長として何かを生み出せるのではないかと考えたわけです。
そして今年は大阪のWRECKING CREW ORCHESTRAがE-SQUADで注目を集め、単独公演の規模を拡大。個人的にもインタビューの機会をもらうこともでき、大変刺激を受けました。
さらにApple WatchやMyoなどのWearable Gadgetを使えば、音楽の演奏も含めて可能性は広がる一方です。
子供の遊び、見栄と楽しさから始まるダンスの身体表現が、エンターテインメントとして新たな方向性を獲得する道はいま、とてつもなく大きな可能性が開かれています。もちろん、そうなってくると単に踊りの技術だけではなく組織として動く力、演出力、企画力、さまざまな能力が求められることになります。
組織力、マーケティングなどで最大の成功例として挙げられるのはやはりEXILEなのでしょうが、個人的には「身体表現の先にある驚き」をもっともっと見たい。そしてその逆に、そういった拡張表現を効果的に見せる必要性があって初めて発展する身体表現だってあるはずだと。
なぜ即興にこだわるのか、ということはまた書くとして、これからの時代、夢は広がる一方です。
[訂正]
初出時、時系列として、当初自分がパフォーマンスした後にNosaj Thingのビデオが出た、という自分の記憶に従って文章を書いておりましたが、確認したところNosaj Thingのビデオを見た後に自分のパフォーマンスをやっていたことがわかりました。自分で思いついたような書き方をしており大変お恥ずかしい間違いですが、それに従って内容を訂正させていただきました。