続 見えない女性差別 – 男にとっても大損害

日本には表立って口に出されることのない「 見えない女性差別 」がしっかりと根付いている、という話を以前書きましたが、先日またまたTEDでこれをunconscious biasと呼んで取り上げている女性を見つけました。

翻訳の不可能性を踏まえつつも訳してみるなら、「無意識の先入観」というところでしょうか。

どうしても歴史的な重さを持ってしまうracismやsexismという言葉ではなくbiasという言葉を使い、自らの背景も紹介することで、それこそ聴く人の「無意識の先入観」を自覚させ、意表をついてみせるこの講演は実に素晴らしいものですから、ぜひ見てください。日本語字幕はついていませんが。特に、性別や民族、肌の色、宗教や受けた教育など幅広い「先入観」を対象としていること、具体的に自分たちの行動から「ドアを開こう」と呼びかけるこの人はとてつもなく美しいですね。

さて、この差別ですが、女性が差別されることで間違いなく男性も不利益を被っています。

男性に聞きましょう。
例えば、もしあなたの職場に、あなたより能力のある女性がいたらどう思いますか? 彼女の力を素直に認めて、協力し学んでいくことができますか? もしその有能な人物が男性であれば、おそらくそういった関係、または、負けないぞ!という競争心が働くかもしれませんが、その人が女性であったら? そもそも、あなたと同じレベルの仕事を与えられる機会は彼女にあるでしょうか? もしそうでなければ、あなたの属する組織は人材の活用に失敗しており、持てる力を発揮できていないことになります。

ということは、その会社の先行きは若干不安ですね。
辞めたほうがいいのでは?

ふむ、あなたはそんな差別はしないぞ、と。社内でも(具体的な給与水準はともかく)女性がどんどん活躍していると。
では、恋愛ではどうでしょう?

よく聞くパターンですが、あなたの彼女や、結婚相手があなたより稼いでいたらどう感じますか? 自分を卑下したり、コンプレックスを感じずにいられますか?
実は僕自身、お金のことではないですが、かつてお付き合いしていた女性が自分よりもはるかに人と仲良くなるのがうまく、僕の友人関係やコネクションにあっさりと食い込み、さらに広げていったことに嫉妬を覚えたことがあります。我ながら小さい人間だなあ、と振り返れるだけまだマシかもしれませんが、あれは本当に醜い感情でした。

最近見た映画で、意外なほどよく出来ていた『脳内ポイズンベリー』1でもアーティスト志望の青年と、作家として成功していく年上女性のすれ違いが取り上げられています。

僕ならそんな女性大歓迎なわけですが(笑)、もし、相手の成功を一緒に喜ぶことができないのなら、一緒にいることなんてできませんよね?

もうひとつ、前回取り上げた女性側が男性を選ぶ視点の話もありますね。「女性の方が経済的に不安定になりやすいがために、より有利な男性との結婚を望む」というアレです。選ばれる男の側からしたら、「この人は少なくとも経済力を一つの基準として自分と結婚した」または「経済力がないがために自分は恋愛の対象にすらならなかった」という状況が生まれやすい。もちろん、昔から男はある種の強さを求められてきましたし、現実問題、女性から求められる以上はカネも力も持つに越したことはないでしょう。でも、それって本当にあなたのことを好きなんですか? 経済力や、自己顕示欲を満たすための、trophy wife2ならぬtrophy hubby3ではないですか?

実際の恋愛では、まだまだ男が守り女が守られる、諸々のコードは生きているし、自分もどちらかと言うとそれを楽しみたい人間です。ですが、現実として、自分たちは絶対的に先入観を植え付けられており、それが社会のあちこちで誰かに苦痛を与えている。常識として、人間の多様性を認めて生きていく上でこの現実が自分と自分の周囲を間違いなく蝕んでいることは、意識しておくべきでしょう。

僕らが生まれてきたこの世界は公平でも平等でもない。
だからこそ、少しでも平等な機会を得られるようにし、自分たちの心のなかの先入観を自覚する。冒頭のビデオに戻れば、異なる背景の人とふれあい、自分の経験を話し、交換する。そうすることで、世の中は必ず変わります。

まず、自分の周りから始めましょう。

  1. 少女漫画原作ですが、原作よりお勧めです >> trailer
  2. 金持ちが若く魅力的な女性を妻に迎えて権力の証明とすること
  3. 「タガメ女」という言葉を提唱した本があります。