interview & transcribe: Omizu, Jiro
date: 30th, Apr. 2005
Marley Marlの作ったビートを聴いた時はトバされた!
-どのようにHip Hopに触れるようになったのか教えてください。
ある意味ではHip Hopそのもののなかに生まれたようなものなのさ。俺が育った時期というのはHip Hopが生まれて、育っていった時期とおんなじなんだからね。それがNYで拡がっていく、まさにそこに居たわけだから。
-Hip Hopを意識しだしたころ、あなたはいくつくらいだったんですか?
7歳、8〜9歳か、まあその頃だろうな。park jam1でデカいサウンドが聴こえてきてたのがその頃だね。
-具体的にHip Hopを「やる」側にまわったのは、何からだったんでしょう?
そもそも最初はDJだね。それからビートを作るようになったのさ。
(ここでフロアから彼のヒット曲“ijuswannachill”2が聴こえてくる3)
-この曲最高ですね、大好きです。
ありがとう(笑)。
-これまでに作ってきた曲で、自分が一番好きな3曲を挙げてもらえますか?
Slick Rick(スリック・リック)の“It’s a Boy (remix)”とCommon Sence(現在はコモン名義)“Ressurection(remix)”、それにNas(ナズまたはナス)“It ain’t Hard to Tell(remix)”だね。
-その3曲はそれぞれどこが好きなんでしょう?
なんでこの3曲を挙げたかというと、昔も今も、たくさんの人が「この曲がすごく好きなんだ」と言ってくれるからさ、さっきもフロアでかかってただろ(笑)?
-誰もがそれだけ好きになる魅力というのはどこから生まれてくると思いますか?
俺だけのオリジナルなスタイルがあるからだと思うよ、RAWだしね。ただレコードを聴いていたり、DJをしているときに感じた音をそのままビートマシーンにぶつけた結果なんだ。
-あなたの作るビートは、別々のいろいろな曲からたくさんのフレーズやドラムの音を組み合わせたとは思えないほど、ひとつの曲として力強く聴こえますよね?
その通りさ、間違いなく。サンプリング、スクラッチ、カッティング。ループを組み合わせるんだ。
-その統一感を生み出すアイディアの源はどこに?
DJをすることさ! 他人のDJを聴いているのでもいいんだが、レコードを回しているといろいろな曲をつなぎ合わせてブレンドすることになるだろ? そのときにハマったものをしっかり覚えておいて、サンプルしていくんだよ。
-あなたのそういったスタイルと共通性を感じるビートメイカーは誰でしょう?
Just Blaze(ジャスト・ブレイズ)、The Alchemist(アルケミスト)、それにもちろんDJ Premier(DJプレミア)、Pete Rock(ピート・ロック)だね。
-ではトラックメイキングではなく、プレイする方のDJで影響を受けたのは誰ですか?
Marley Marl(マーリー・マール)、Pete Rock、Chuck Chillout(チャック・チルアウト)。
-それらの人がスペシャルだった理由は?
独自の色を持っていたことだろうね。それぞれがDJとしてプレイしたことを自分の創り出すビートにつなげていたんだ。最初にMarley Marlの作ったビートを聴いた時はホントにトバされたね!! 「俺もこんなビートを創りたい」って思ったものさ。
Hip HopのビートメイキングそのものがDJから始まっている
-ではいま注目しているMCは誰でしょう?
Juelz Santana(ジュエルズ・サンタナ)が好きだね。The Dipset(ディップセットまたはDiplomats/ディプロマッツ)だな。
-これから一緒に仕事をしてみたいアーティストは?
誰でも、いいアーティストなら誰でもいいんだけどね。特に挙げるならJadakiss(ジェイダキス)だな。彼はスキルがあるよ。
-今回、一緒に来日したRashad Smith(ラシャッド・スミス)4とともに、再びMain Source(メイン・ソース)として活動を始めるというお話ですが、どんな活動を考えているんでしょう? またラップもしますよね?
もちろん。まだ始めようって言い出しただけだからね。まずは何回かライブをしてみて、その上で何ができるか考えてみるつもりだよ。(※この来日と相前後したタイミングではLarge Pro名義の12インチシングル“the Beginning”をリリースしている)
-Rashadとはいつごろから一緒にいるんですか?
Main Sourceのアルバム”Breaking Atoms”5をリリースしたすぐ後くらいからの付き合いだよ。でももともとはRashadが「またMain Sourceをやるべきだ!」って言い続けてくれててさ、彼のためにもやってみようかってところなんだ。
-Swizz Beatz(スウィズ・ビーツ)が流行らせたキーボードを弾くことを中心にしたビートメイキングや、サンプリングと生楽器の演奏を組み合わせるようなスタイルも多くなってきていますが、そういった音作りに興味はありますか?
(ニヤリと笑って)サンプルだけだね。
-なぜでしょう? サンプリングの魅力はどこにあると思いますか?
さっき言ったことにつながるんだが、DJと結びついてるからさ。Hip HopのビートメイキングそのものがDJから始まっているんだ。DJはキーボードなんて演奏しなかった、レコードでスクラッチしてきたんだ。それこそがHip Hopのオリジナルのフォームだからさ。
-ではそういうDJをするときにレコードの2枚使いをするのに特に好きなビートは何かありますか?
Mohawks(モホークス)の“Champ”、”Kool is Back”とかJB’s “The Grunt”、…オウ、メーン、山ほどありすぎるぜ!! James Brown(ジェイムス・ブラウン)、Donald Byrd(ドナルド・バード)、ヤバいアーティストも本当に数え切れないほどいるからな。
-“the Grunt”のあのホーンとか、クレイジーですねー。
イエー。
メインストリーム、アンダーグラウンド、どれもいいと思うね、俺はどっちも好きだぜ。ホットなものはホットなんだよ。
-いま、NYでは定期的にDJしてますか?
毎週火曜に205 Christie St.の6s & 8sっていうクラブで回してるよ。ロウワーイーストエンドにある。SOUL、Hip Hop、ROCK、なんでもかけてる。
-メインストリームに流行ってるHip Hopなんかもかけます?
もちろん。Dipsetがいいね。とにかくなんでもさ、いいものだったらかけるんだよ。
-いま日本ではメインストリームとアンダーグラウンド、聴く人がそれぞれに分かれてしまっている状況があるんですが、あなたから見てどう思いますか?
まあそういう人も居ていいと思うけどね。メインストリーム、アンダーグラウンド、どれもいいと思うね、俺はどっちも好きだぜ。ホットなものはホットなんだよ。
(初出:Dextra 2005年 ※一部表記や注釈を変更しております)
photo by Yoko Yamashita ( facebook / tumblr )
- いわゆるblock party (ブロックパーティ)
- アルバム“The LP”収録
- このインタビューは来日公演時のサウンドチェック中に行われた。
- Tumbling Dice Productions主宰、Busta Rhymesなどのビートメイカーとして活躍したDJ/プロデューサー。
- Large Professorの名を広く知らしめた傑作アルバム。アルバムリリース前のNasが“Live at the Barbeque”に登場することでも知られる。