すごくアホらしいタイトルにあきれる人もいるとは思いますが、最近またFair Tradeのことを考えてます。アメリカでは去年、取り扱い額が501%増1、すなわち前年比6倍もの売上げを記録したというあのロゴ2です。
僕は大好きなコーヒーとレゲエをきっかけにフェアトレードを知りました。ちなみにみなさん、コーヒー1杯3につき、コーヒー農家が受け取る豆の単価っていくらぐらいだと思いますか?
なんと、5円以下です。
下手をすると、2円を切る例もあるとニカラグアなどでの報告があります。
コーヒー農家はコーヒー1杯分に対して4.2円程度の売値が保証されないと、労働コストに見合わないと言われています4。この最低価格を保証し、クオリティの高い豆を生産している農家、正確には生産者組合に価格を保証する形で買いあげられた製品が、フェアトレード認証を受けて僕らのところまで届く、というわけです。
「公正な取引」で生産・加工された商品である、という証拠として始まったこの認証制度、もともとは東欧の手工芸品から始まったそうですが、食品では立場の弱いコーヒー農家やバナナ農家を守るためにスタートしました。
農産物の輸出入業者は交通条件の悪さ、ギャングまがいの仲買人たちによる独占体制などを利用して犯罪的なほど不当に安い値段をつけているため、農家が貧困から抜け出せないという状況があちこちにあるわけです。
また、資本主義の規模を拡大すると単価が安くなるという仕組みが、零細農家を圧迫するというのは日本のTPP問題などを見てもわかりやすいはずです。冒頭でレゲエと言ったのはこのパターンで、ジャマイカのバナナ農家はより安く大量に生産できるアメリカ企業、DoleやChiqitaに価格で対抗できず、廃業に追い込まれていったことをある映画で知りました。
Doleのバナナ、安くておいしいですよね。パイナップルなんかもよく目にします。でも、その商品を選ぶことで、実はジャマイカの農家と同じように苦しんでしまう人たちがいるかもしれない。
それが「グローバリゼーション」というかっこよさげな言葉の裏側で起きてきた現実です。
ということで、フェアトレードが登場!!
このロゴが付いているものを選んでおけば、農家の人たちも自分たちもハッピー!なはず……。
でも、ちょっと怪しいな、と思ってたんです。
一昨年くらいだったか、渋谷にモリバコーヒーという安いコーヒーチェーン店ができました。なんとそこでもFair Tradeのコーヒーを扱っているというんです。はっきり言って不味かったんですが、この店、実はあのゼンショー・グループの店だったんです。
ゼンショーといえば、あの「すき家」の会社。ブラックなアルバイト酷使で話題になった企業がFair Trade……? おかしくない? 浮かんでは消える大丈夫なの?という疑問。
ということで調べてみました。
ゼンショーは確かにタンザニア、ルワンダ、ウガンダのコーヒー生産者組合などとのコーヒー豆取り引きで5%のプレミアムをのせた価格を支払い、そのおかげで児童労働問題が改善したという広告記事5を見つけました。あくまで広告記事ですが。
でも、一方で日本ではアルバイトをこき使って最近では珍しいストライキ騒動6まで起こったほど。
ここでちょっと最初のコーヒーの原価のところにまで戻りましょう。Fair Trade基準の4.2円に5%のプレミアムを追加して、1杯あたり0.2円のコストが増えても、1日1000杯のコーヒーが売れたとして200円にしかなりません。日本での人件費を削りまくるのと比べたら、本当に吹けば飛ぶようなコストなわけです。しかも、実はゼンショーはFair Tradeの例のロゴは使っていません。「フェアトレード」を名乗っているけれど国際団体の認定は受けていない、というこの施策は、現実にルワンダのコーヒー生産者を助けているかもしれませんが、あくまでイメージ向上のために利用しているものでしかないと考えられます。
Fair Tradeだからと言って、そのブランドを信用していいわけではない、というものすごくわかりやすい例ですね。
ではFair Tradeは意味がないのか? いやいや、そんなことはないでしょう、という話をまた次回。
- 2013ー2014 Annual report by Fair Trade International
- 正確にはFair Trade Internationalという団体の認定ロゴです。
- アラビカ種 平均400円弱
- Fair Trade Internationalによる2011年以降の基準
- Japan Times Jun.01.2013.
- 「すき家(ゼンショー)ワンオぺ問題&大量退職」NAVERまとめ