外国語学習、もうひとつの大きな壁[自己主張編]

日本人が自分たちをどう思っているかという調査では、「親切」「勤勉」「礼儀正しい」という結果が出ているそうです。

僕が個人的に解釈するとそれぞれ「内輪と一見さんには親切」「生産性が低い」「慇懃無礼」となるんですが、それはさておき。以前の記事、

>> 日本人が英語学習でぶつかる3つの壁。

でちらっと書いた、もうひとつの大きな、巨大な壁について書いてみます。

外国語、特に英語では自己主張が必須!

これは、一部の人にはまったく関係のない話です。どんな人かというと、いろいろな会議などで率先して発言する人。日本人がやる“会議”は、(チームの共感度を上げるためには重要ですが……)実は大半の時間が議題とは関係のない世間話の類に費やされ、肝心の議題については主体的な意見を述べる人が極端に少ないのは御存知の通りです。日本人の多くは「自分の意見を言わない」ことが多い。正確にはもちろんみんなある程度、自分の好みや関心、意見を持っているものですが、それを酒を飲む場でなければ発言しようとはしないことが多すぎるのです。

翻って、外国語を話すというのはどんなときでしょうか?

ありとあらゆる場合が考えられますが、とにかく重要なのは相手を理解することと同時に、自分を理解してもらうこと。それなのに、僕らの多くは人前で自分を発信するすることをなるべく避けるように育てられています。「出る杭は打たれる」、「能ある鷹は爪を隠す」という言葉があるように、自分の意見を全面に押し出すことは、日本社会では煙たがられます。発言するなら「空気を読んで」しなければならない。

だから、そもそも率先して話すことに慣れている日本人というのが少ない。結果、苦し紛れにステレオタイプな質問を発することになります。

「どこから来たの?(何人なの)」
「日本は好き?(寿司でも代用可)」
「納豆は食べたことある?」

最後はそう一般的でもないかもしれませんが、こう質問された相手は「何人かで対応を変えるつもりなの? 差別主義者?」と思うかもしれないし(笑)、「嫌いな国にわざわざ来ないよ……」とか微妙な展開(笑)が待ち受けることになるかもしれませんね、あくまで一例としてですが。

「“話題のない人”なんていない、共通の話題がない人がいるだけだ」という言葉がありますが、その共通の話題をいかに見つけ出して話すか、そして自分の気持ちや考えを伝えるか。そういうコミュニケーションの手法そのものの次元でも、実体験として日本人は特にWestの人々と話すのに向いていません。英語ネイティブの英語教師の方も「多くの生徒さんは自分で言いたいことをもっていないのが困る」という趣旨のことをおっしゃっていました。

とにかく発信してみれば、何かが返ってくる

ではどうするか。

最初の記事に書いたTED動画を思い出してください。言語は「道具」です。例えば仕事で使うなら、仕事で必要な言葉を覚え、自分なりの話ができるようにする。趣味の世界におきかえてもいいでしょう、自分がどんなことを伝えたいのか、それを意識しながら言葉を身につけ、ひとつでもいいから伝えてみることです。そうすると、相手も必ず何かしらを返してくれる。そこからまた新しい言葉、新しい表現、新しいフレーズやニュアンスに触れることができる。その循環をたくさん作れれば作れるほど、言葉は身につきます。

もうひとつ、先に書いたとおり、「外国語というのは別の視点で世界を受け取る」ということを意識するのも良いと思います。ある程度、外国語でのコミュニケーションに慣れている人ならわかってくれると思いますが、日本語で話している時の自分と、英語で話している時の自分は性格が変わります。「マインドセット」1という言葉がありますが、それが変わるといえばわかりやすいでしょうか。言葉の示す概念、物事が微妙に日本語とは異なるのが当たり前なので、それを使って考えるようになると、人格そのものまで少し変わってしまうんです。

この「ちょっと違う自分」を最初から意識しておけば、外国人との会話だからといってただもじもじするのではなく、とにかくなにかしゃべってしまいやすくなると思います。そして、そうやって発した言葉から、新しい自分自身を知ることもできる。自分がどういう人間なのかも、これまでとは違う言葉のつながりから複眼的に見ることができるようになる。そういう素晴らしい体験がきっと待っています。そうすると、さらに人に伝えたいことが自分の中から生まれ出てくる。ここでも良い循環が作れれば、さらにコミュニケーションが進むはずです。そのなかで伝えたかったのに伝えきれなかったこと、悔しいことが出てくるはずです。特にアメリカ人はなかなか自説を曲げませんから、意見を引っ込めずに、ぶつけあうと自分でも知らなかった自分が見えてくると思います。

とにかく最初は勇気を出して自分をさらけ出すこと。そうしたら、きちんと返してくれる相手がきっといます。しかも、その相手のことがわかるだけではなく、自分がぼんやり考えてきたことが言葉になって実感できるようになる。そうやって自分と世界の両方がだんだんとわかっていく、それが面白い会話というものです。

世界に言語オタクと言われるほどいろいろな言葉ができる人達がいるのは、そういう発見、人間を知るという喜びがたくさんあるからなんじゃないでしょうか?

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  1. 考え方の基本的な枠組みのこと。組織に対してだけでなく、個人に対しても用いられる。 (略)同じ知識や技能を学ぶにしても、その意味や目的を意識するのとしないのとでは、結果に大きな違いが出ることがある